4月13日、大阪・関西万博会場で台湾が民間企業「玉山デジタルテック」として出展したパビリオン「テックワールド(TECH WORLD)」がお披露目された。

外観は台湾の多様で豊かな自然と文化を象徴し、館内には「生命」「自然」「未来」の3つのテーマが設けられている。

クロスメディアによる没入型体験を通じ、「世界とつながり、未来の美しい生活を共に創る」という理念を来場者に伝えている。

 今回の万博には世界150か国以上が参加し、2800万人を超える来場者が見込まれている。

しかし、博覧会国際事務局(BIE)に加盟していない台湾は「台湾館」の名称では参加できなかった。

台湾の存在感を高め、より多くの人々に台湾を知ってもらうため4月12、13両日、インド太平洋戦略シンクタンク(IPST)は、台湾の民間団体「黑熊学院」「486団購入ネットワーク」「台湾ホットニュース」などと連携し、大阪の台湾人コミュニティーの協力を得て大阪駅前で「台湾祭り」を開催した。

このイベントはテックワールドの開館記念イベントとしてだけでなく、「台湾は重要な国際舞台から降りることは決してない」という強いメッセージを発信した。

 2日間にわたるイベントでは、テーマに沿った展示や記念品の配布、ミニゲームを通じて日本の市民との交流や写真撮影や交流が行われた。

台湾から来日した音楽家の呂輝格氏、歌手のクリフ(Cliff)氏は自作の楽曲を披露。

また、台湾政府国策顧問の陳天隆氏と謝美香氏、開南大学主任秘書の陳文甲氏、台北駐大阪経済文化弁事処副処長の劉拓氏、大阪府議の杉江友介氏、大阪市議の辻淳子氏も駆けつけ、各ブースで来場者と交流しながら台湾の魅力を伝えた。

 大阪の台湾人コミュニティーのリーダーである陳天隆氏は、13日にメディア取材を受け、「台湾の人々の情熱・創意・行動力は、台湾祭りを通じて世界に『台湾は欠席しない、必ずそこにいる』ことを証明した。

台湾祭りは本日で幕を閉じるが、これは始まりにすぎない。日本在住の台湾人たちは引き続き世界に台湾の声を届けていく」と語った。

会場のボランティアからは「中国からの留学生がひそかに台湾祭りを訪れて『台湾頑張れ』と声をかけてくれた」「日本の市民から『台湾の重要性を再認識した』『台湾に行ってみたい』という声が寄せられた」というエピソードも明かされた。

 黒熊学院の朱福銘執行長は「台湾祭りへの参加を通じて、台湾市民は自ら台湾を守る意識を重視していることを示した。

ブースには日本の市民が多くのメッセージを書き残し、そのほとんどが『台日友好』に関するものだった。今回の台湾祭り台日友好のテーマを伝える良い機会となり、多くの温かい反応が得られた」と手応えを語った。

 台湾祭りは大阪・関西万博の重要なプレイベントであり、インド太平洋戦略シンクタンクはこの活動を通じて台湾と日本の政界、華僑社会、文化団体の力を結集し、台湾の民間外交の新たな一歩を踏み出した。

 テックワールド館が台湾のテクノロジーの実力を示す一方、大阪駅前の「台湾祭り」は文化と民間交流の架け橋となり、自由な台湾の力強さと温かさを世界に伝えた。

台湾は万博という国際舞台で再び感動の物語を刻み、「民主台湾」及び民主主義陣営との理念をさらに強化した。

今年は第二次世界大戦の終戦から80周年にあたります。しかし、かつて日本の植民地であった台湾の主権帰属問題は、未解決のままです。

報道によると、中国は台湾の親中派政党と共に「台湾光復(復帰)80周年」を祝う大規模なイベントを計画しており、これを通じて台湾に対する中国の主権を強調しようとしています。

これに対し、台湾(中華民国)総統の賴清徳氏は3月13日、中国の「反分裂国家法」施行20周年を前に「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」とあらためて強調しました。

また「中国は台湾に対する国外の敵対勢力である」と明言し、主権問題において妥協の余地がないことを示しました。

中国は4月1日、「海峡雷霆-2025A」と名付けた大規模軍事演習を開始しました。

この演習は賴清徳氏の発言に対する「断固たる懲罰」であると中国側は表明しましたが、同時に「中国は台湾に対する国外の敵対勢力である」ことを自ら証明する形となりました。



中国による武力統一「デビッドソンの窓」

「海峡雷霆-2025A」演習は、雷霆(雷鳴)の名とは裏腹に「雷鳴轟くも雨は少なし(威勢はいいが実行力に乏しい)」と揶揄されたものの、親中派メディアは演習を大々的に報じ、台湾海峡とインド太平洋の安定に悪影響を及ぼしている責任を賴清徳総統に転嫁し、「両岸の平和を破壊した者」「台海危機を招いた者」と非難しています。

しかし、西側諸国の客観的なメディアは中国のこうした論理を受け入れていません。

実際、賴清徳氏が総統に当選する前の2021年5月、英国の経済週刊誌エコノミストは「世界で最も危険な場所(The most dangerous place on Earth)」という衝撃的な表紙で台湾を取り上げ、中国からの深刻な脅威を報じていました。

この論調の背景には、2021年3月に当時のアメリカ軍インド太軍司令官のフィル・デビッドソン海軍大将が米上院で「中国が2027年から2035年の間に台湾を奪取する可能性がある」と警告したことがあります。

特に2027年は中国人民解放軍の建軍100周年であり、軍の近代化が完了するタイミングでもあることから、米軍は「最悪の事態に備えよ」という前提の下、この期間を「デビッドソンの窓(Davidson Window=「窓」は期間の意味)」と呼び、中国の武力侵攻に対応する準備期間として防衛整備を加速させています。

アメリカはこの期間内に台湾を「ハリネズミ」のように武装させ、防衛拠点とする構想を進めています。



台湾の深層的な脅威は「武力侵攻」ではなく「浸透」

アメリカは台湾の防衛強化を支援し続け、台湾は現在、イスラエルに次いで世界でも最も密に防空・制海兵器を配備する「要塞」となりつつあります。

しかし、ロシア革命の指導者レーニンに学ぶ中国共産党は、「要塞は内部から陥落するのが最も容易である」とのレーニンの言葉を実践し、武力による統一の準備と並行して、「隠密戦線(非軍事的浸透工作)」に長年力を注いできました。

賴清徳総統は今年3月13日に開かれた「中国の統一・浸透工作に対する市民のコンセンサスを強化する国家安全保障会議」で、以下のように警告しています。

  • 中国は数十年にわたり、台湾を併合して中華民国を消滅させる野心を一日たりとも捨てたことがなく、「文攻武嚇(プロパガンダと軍事的威嚇)」を続けており、台湾社会への統一・浸透工作はますます深刻化している。
  • 中国は2005年に「反分裂国家法」を制定し、武力による台湾併合を「国家任務」と明記したことに始まり、2023年6月には「台独懲罰22条」を発表。「台湾は中華人民共和国の一部である」という認識を受け入れないすべての人々を「懲罰対象」と見なしている。
  • 1971年に国連総会で採択された「2758号決議」(「中華人民共和国が中国を代表する唯一の合法政府である」と認めた決議)を歪曲し、あたかも中国が台湾に対する主権を国連により認められているかのように偽装している。
  • 中国は、自由で多元的な台湾の民主制度を悪用して、暴力団、メディア、評論家、政党、現職・退役の軍人・警察官に工作を仕掛け、台湾内部での分裂、破壊、転覆活動を進めている。
  • 国家安全部門と司法機関の統計によれば、2024年に中国に協力するスパイ活動で起訴された人物は計64人で、これは2021年の3倍にあたる。このうち、現役・退役の軍人が計43人(66%)を占めている。

これらの深刻な状況を踏まえ、賴清徳総統は、台湾への内政干渉を防ぐ「反浸透法」に基づき、中国を「国外の敵対勢力」と明言しました。

 



「17項目の戦略」で台湾の防衛意識を再建

台湾が現在直面している安全保障の脅威に対し、賴清徳総統は「17項目の対応戦略」を提示しました(詳細は付録に記載)。

17項目の対応戦略とは一言でいえば、親中派の国民党と中国共産党が共同で作り上げた、いわゆる「92年コンセンサス(※)」によって破壊された台湾の反共防衛意識を再建するためのものです。

(※1992年に中国と台湾の窓口機関が「一つの中国」原則を口頭で確認したというもの。文書もなく、台湾の民進党政権は92年コンセンサスを受け入れていない)

毛沢東の「誰が我々の敵か、誰が我々の味方か──この問題が革命の第一の問題である」(1925年12月「中国社会各階級の分析」より)という言葉からも分かる通り、敵・味方を明確に区別することは闘争の基本であり、逆に言えば「敵・味方意識」を混乱させることこそが統一工作の核心的な目的でもあります。

たとえば、「両岸(中台)は一つの中国に属する」「血を分けた同胞」「両岸は一家」「中華民族は同根同源」「我々は皆中国人だ」「中国人は中国人を撃たない」といったスローガンは、台湾と中国の間にある敵・味方の区別を意図的にぼやかし、台湾人の反共防衛意識を弱体化させる手法です。

特に2015年、当時の馬英九総統が中国の習近平国家主席とシンガポールで会談し、笑顔で杯を交わす映像が公開されたことは、長年培われてきた台湾の反共心理を大きく崩壊させました。

この間に台湾軍に対する中国の浸透工作は加速し、多くの幹部級の退役軍人が中国の統一工作に組み込まれるようになりました。

中には陸軍退役中将の高安国氏のように、台湾軍に「反乱」を呼びかけるような人物まで出現しました。

これはまさに「上梁不正、下梁歪(上が正しくなければ、下も乱れる)」という中国のことわざを体現した状況です。

そのため、賴清徳総統は軍法制度の回復と軍事裁判制度の復活を提起し、軍紀を正して士気を確保しようとしているのです。

 4月2日、トランプ米大統領が「相互関税」を発表して以来、米国株式市場は数日間にわたり急落し、投資家からの信頼は大きく落ち込みました。関税率がウォール街の予想を大きく上回り、まさに「ブラックスワン(予測不可能な事態)」を目の当たりにしたからです。


 特に10年物国債が売却され、利回りは4月3、4日に下落した後、4月7日から9日にかけて突然急上昇しました。

これによりトランプ氏は4月9日に劇的な転換を行い、中国に対する相互関税を125%に引き上げ、さらに薬物のフェンタニルが米国に流入している問題を取り上げて20%を加え、関税は145%に達しました。一方で他の国に対する相互関税は90日間延期され、交渉の時間が設けられました(すでに75カ国以上が米国に報復せず、交渉の準備をしている)。


 トランプ氏の狙いは、唯一米国に報復した中国に対して関税を145%に引き上げることであり、他の国々の相互関税は交渉期間中、基準関税の10%に設定されています。

表面的にはトランプ氏は全世界に対して相互関税を課していますが、実際には中国を標的にしています。このような関税戦争は、貿易や経済の範疇を超え、強い地政学的な意図があることは明らかです。


 関税とは伝統的に産業政策の手段であり、保護主義の道具でもあります。

たとえば、自国の自動車産業を保護したい場合、輸入自動車に関税を課します。

トランプ氏の「革新」は、関税をマクロ経済の手段に引き上げ、製品でなく国を対象に課税し、当該国との貿易による米国の赤字額と関連付けて税率を設定したことです。


 関税は、自国産業の保護や貿易赤字への対処だけでなく、トランプ氏の運用ではさらに2つの経済的な目的が強調されています。


 第一に、関税を利用して外国企業に米国への投資と工場設立を促すことです。

米国内で生産・販売すれば、関税を支払う必要がありません。

さらに言えば、トランプ氏の意図は、米国での雇用機会を創出し、「製造業の空洞化」の問題に対処し、米国の「再工業化」を推進することです。


 第二に、関税収入を財政収入の新たな源と見なすことです。

以前の関税は特定産業の保護が主な目的でしたが、現在の関税はそれ自体が目的であり、この方法で財政収入を増加させ、連邦赤字を軽減し、財政均衡の原則の下で、関税収入を利用して他の分野で減税を推進することができます。

たとえば、所得税や営業税を引き下げることで、家庭の消費や企業の投資を促進し、実体経済に活力を与えることができます。


 この一連の関税操作により、トランプ氏は関税を新たな高みに引き上げ、地政学的なツールとして同時に3つの目標を追求しています。


 第一の目標は、「戦時経済体制」を構築し、戦争に備えることです。

米国の再工業化を推進する過程で、トランプ政権は重要産業の米国内での定着を強調しています。

重要産業には2つの大きなカテゴリがあります。


 第一のカテゴリは「戦略物資産業」であり、鉄鋼、石油、半導体、医薬品、レアアース(希土類)、造船、自動車(自動車の生産ラインは戦争勃発後、軍需品や武器の製造に転用できる)などが含まれます。


 グローバル化の時代において、米国は製造業を海外に移転または外注し、再び輸入するという国際分業戦略を採用してきました。


 しかし、コロナ禍の期間中、米国は中国からマスクや医薬品を正常に取得できず、ロシアはウクライナ戦争を始めると半導体を入手できなくなり、一部の武器システムを生産できず、前線の消耗に対応できませんでした。

米国はこの「サプライチェーンの断裂」の問題を認識し、戦略物資産業を米国本土に引き戻す決意を固めました。

このような「サプライチェーンの安全性」は経済安全保障であり、国家安全保障の一部でもあります。


 第二のカテゴリは「先端技術産業」であり、量子コンピューティング、スーパーコンピューター、低軌道衛星、ドローン、ロボット、シリコンフォトニクス、核融合などが含まれます。米国はこれらの先端技術を自ら掌握し、中国企業による盗用を防ぐことで、米国の優位性と覇権を効果的に維持する必要があります。


 米国の立場から見ると、戦略物資産業と先端技術産業の両方が米国本土に定着する必要があります。

戦争が勃発してから輸入しようとしても間に合わないからです。率直に言えば、米国の再工業化自体が、戦時経済体制の構築を意図しています。


 第二の地政学的目標は、中国の大国としての台頭を抑制し、米国の世界的リーダーシップを維持することです。


 現在、トランプ氏の真の狙いが明らかになってきました。彼の関税政策は、間違いなく中国を標的にしたものです。


 米国の地政学的戦略は、中国の台頭を根本から断ち切り、中国の経済力や技術力を削ぐことにあります。

そうすることで、中国共産党が国際舞台で米国に対抗し続ける力を奪い、挑発的な行動を取る余力を無くそうとしているのです。

輸出に高関税をかけることで、事実上これまで中国に与えていた米国市場を閉ざし、米中間の「貿易最恵国待遇」は完全に崩壊しました。


 この結果、中国が過去30年間続けてきた「輸出主導型経済モデル」は終焉を迎え、「世界の工場」としての時代も終わりを告げました。

中国はこれまでグローバル化の最大の受益者として、外需によって国内の労働力・土地などの経済資源を動員し、経済成長を成し遂げてきました。

これは、内需に頼るだけでは不可能であり、毛沢東時代の社会主義体制では成し得なかった成果です。


 さらに、米国は中国企業が西側諸国から技術を獲得することを阻止しようとしています。

そのため、米中間の貿易交渉では、知的財産の窃取、技術移転の強要、国家補助金、参入障壁などをめぐる問題が中心テーマとなっています。

バイデン政権からトランプ政権まで一貫して、技術制限と輸出規制は米中経済関係の中核に位置しています。


 第三の地政学的目標は、「ルールに基づく国際経済秩序」の再構築です。

その過程において、トランプ氏はまず関税という手段を使って各国の反応を試しました。

もし相手国が建設的に米国との貿易赤字解消に協力するのであれば、関税は交渉の余地があります。

しかし、政治的な対抗意識から報復措置に出るならば、米国は容赦しません。


 この試練は、各国に「どちらの陣営に立つか」を表明させるものであり、米国陣営か中国陣営かを問う「踏み絵」のような役割を果たしています。

これまでのところ、中国と歩調を合わせて米国に報復関税を課した国は一つもなく、中国は完全に孤立しています。

むしろ、ベトナムやイランのような国々が米国に接近しつつあります。


 振り返ると、トランプ氏の関税戦略は最初から中国の報復を想定しており、むしろそれを誘導していたようにも見えます。

トランプ氏はまず「相互関税を課す」と表明しますが、「中国は報復してはならない」と警告します。

中国が報復に出ると、トランプ氏は最終通告を行い、撤回を要求します。

中国がそれを拒否すれば、米国は関税をさらに引き上げます。


 こうして関税は、34%、84%、104%、125%、最終的には145%へと段階的に引き上げられていきました。

このプロセスは、まるでトランプ氏が穴を掘り、習近平国家主席がそこに自ら落ちていくような構図です。


 この劇的な展開を世界中が目撃する中で、多くの国々は「習近平はトランプの相手にならない」との印象を持つようになり、地政学的な力関係に大きな変化が生じています。


 たとえば、ロシアのプーチン大統領から見れば、これ以上、習近平氏と組むことに利がないと感じる可能性があります。

むしろ早期にトランプ氏と妥協し、ウクライナ戦争から軟着陸する道を模索する方が得策かもしれません。

戦争を長引かせて国力を消耗するより、今のうちに下りる道を探すのです。


 仮にこのような展開が実現すれば、トランプ氏が大統領在任中、「関税」を通じてウクライナ戦争を間接的に解決するという、まさに「意外な形での成果」となるでしょう。


 つまり、表面上は単なる貿易戦争に見える今回の一連の動きが、実はトランプ政権にとって大きな地政学的利益をもたらしているということです。


 最終的に、トランプ関税は以下の複数の目標を同時に達成しようとしています。

 1. 財政収入の拡大

 2. 米国の再工業化の推進

 3. 国際政治において、より多くの国を米国側に引き寄せる

 4. 中国包囲網の形成

 5. 米国主導の新しい経済秩序の再構築


 中国経済の「赤いサプライチェーン」が崩壊し、中国で失業者が急増すれば台湾への圧力も弱まり、その結果、台湾から米国への投資が加速し、米国の再工業化を後押しする可能性も高まるでしょう。


 「インド太平洋戦略シンクタンク」(IPST)は3月28日に台北・圓山大飯店で「台日科学技術未来フォーラム」を開催しました。

半導体戦略、人工知能(AI)リスク、安全保障体制および地域協力をテーマとし、多くの著名有識者を招いて講演が行われました。

 出席者には、日本の元経済産業相の甘利明氏、KDDI共同創業者の千本倖生氏、元陸上自衛隊陸上幕僚長の岩田清文氏、財信メディアグループ董事長の謝金河氏、台湾日本研究院理事長の李世暉氏らが名を連ね、科学技術と安全保障の激動する情勢の中で、台湾と日本がいかに戦略的連携を強化していくかを議論しました。

 

甘利明氏「日本と台湾は半導体協力を強化し、リスクのないAI世界を構築すべき」

 自民党半導体戦略推進議員連盟の名誉会長も務める甘利明氏は「現在、世界はデジタルトランスフォーメーションとAIの波に直面する極めて重要な時期にあり、その中心にあるのが半導体である」と明言。

「AIチップの設計においては米国が主導的立場にあるものの、台湾企業のTSMC(台湾積体電路製造)は世界最先端の半導体製造(ファウンドリ)技術を有しており、技術と製造の両面で相互依存が生まれている」と述べました。

また、米国の労働制度では台湾企業のような効率性を実現することは難しく、特に最先端の半導体チップが単一の供給網に集中するとリスクが著しく高まると指摘しました。

 こうしたリスク分散回避の必要性から、「日本は近年、半導体製造会社ラピダスを設立し、TSMCと『二重の保険』となるような協力体制を築き、安定したサプライチェーンの構築を目指している」と説明しました。

 さらに甘利氏は、中国が生成系AIに必要なデータを包括的に収集している現状に対して警鐘を鳴らし、日本と台湾が連携して「リスクのないAI世界」を築き、民主的なテクノロジーの価値を共に守るべきだと強く呼びかけました。

 

 

自衛隊が統合作戦司令部を新設 岩田清文氏「台湾有事に迅速対応が可能に」

 安全保障協力もまた本フォーラムの重要なテーマです。

日本の防衛省は3月24日、陸・海・空自衛隊の統合運用を目的とする「統合作戦司令部」を新設しました。

初代の統合作戦司令官には、元統合幕僚副長の南雲憲一郎氏が任命され、これまで統合幕僚長が一手に担っていた各自衛隊の統一指揮の負担を分担する体制が構築されました。

 元陸上自衛隊陸上幕僚長の岩田清文氏は、この改革がもたらす二つの重要な意義を説明しました。

第一に、役割分担が明確となり、各部隊の共同行動が円滑になることで、自衛隊の作戦指揮が一層効率的になること。

第二に、統合作戦司令官が米インド太平洋軍司令部と直接連携を取ることで、日米の共同作戦の調整が確保される点です。

 岩田氏は「台湾での戦争は望ましくない」としつつも、万一情勢が急変した場合には、新たな指揮体制により迅速な対応が可能となり、地域の安全保障に挑戦が生じた際にも即座に必要な措置を講じることができると強調しました。

 

 

KDDI共同創業者・千本倖生氏 「独裁国家は最終的に失敗し、日米台韓が輝く」

 KDDIの共同創業者である千本倖生氏は「産業と文明の発展」という観点から講演を行い、「高度なハイテク産業が持続的に発展するためには、民主主義国家こそがその土壌となり得る」と強調しました。

 千本氏は「テクノロジーの革新がAIや電気自動車産業に大きな変革をもたらしている中で、台湾は世界のハイテクサプライチェーンにおいて極めて重要な役割を果たしている」と評価。

日本企業は台湾の効率性と柔軟性から深く学ぶべきだと述べました。

 また、「独裁政権は長期的に見てイノベーションの活力を維持できず、いずれ失敗する運命にある」と指摘。

台湾、日本、アメリカ、韓国といった民主主義のパートナー国家だけが、世界の先端を輝かせる新たなテクノロジーの時代を100年後まで共に切り拓くことができると力強く語りました。

 

謝金河氏「台日のサプライチェーン協力で中国の不当な干渉と浸透に対抗」

 財信メディアグループ董事長の謝金河氏は、台湾社会における「内部リスク」の存在を指摘しました。

特に、TSMCが米国へ進出することに対して一部で悲観的な見方が広がり、世論を誤った方向に誘導していると警鐘を鳴らしました。

 謝氏は、TSMCが中国企業のファーウェイ(華為)への供給を拒否し、米国企業のエヌビディア(NVIDIA)の先端チップ出荷を厳格に管理している事例を挙げ、TSMCが「技術と国防の安全保障に対して高度な責任感を持って行動している」と評価しました。

 さらに、台湾と日本の間には強固なサプライチェーン協力の基盤があり、互いの信頼と技術の統合を通じて産業のレジリエンス(耐久性)を高めるだけでなく、中国からの不当な干渉や情報浸透工作への対抗力を強化し、民主主義陣営の経済的自立を維持するうえでも重要な意義があると強調しました。

 台湾日本研究院理事長の李世暉氏は、世界は現在「チェーンパワー」を中核とする新たな国際戦略秩序へと移行しており、台湾と日本はその重要な交差点に位置していると指摘しました。

 李氏は、「チェーンパワー」とは三つの連携から構成されていると説明。

中国が軍事的ラインとする第一列島線(九州沖から沖縄、台湾、フィリピンを結び南シナ海に至るライン)に位置して安全保障を担う「アイランドチェーン」、半導体とAI技術を供給する「ハイテクサプライチェーン」、そして民主主義の価値観を共有する「民主主義チェーン」を挙げ、「東アジアの将来はこの三つのチェーンによって大きく左右される」と強調しました。

 李氏はまた、賴清德総統が昨年の就任演説で述べた「三つの連携」と「五つの信頼産業」が、自身の提唱する「チェーンパワー」の概念と高度に一致しているとも述べました。

「五つの信頼産業」とは半導体、AI、防衛産業、セキュリティ管理、次世代通信を指し、台湾の戦略的自立を維持するための中核的な支柱であると述べました。

 さらに李氏は、トランプ政権が1980年代のアメリカの主要産業を再興しようとしている政策や、米中対立に起因する技術規格の競争などが、台湾と日本を地政学的に強く結びつけていると述べました。

たとえば、TSMCの日本およびアメリカへの投資の優先順位は、二国間の半導体協力の深さと方向性に直接影響を与えると分析しています。

 李氏は、台湾と日本がより一層協力し、サプライチェーンの再構築や技術秩序の再編といった課題に共同で対応していくべきだと呼びかけました。

 

 大阪・関西万博は4月13日に開幕し、台湾は民間企業「玉山デジタルテック」を通じてパビリオン「テックワールド(TECH WORLD)」を出展した。

インド太平洋戦略シンクタンク(IPST)は台湾の民間団体の黒熊学院や486団購入ネットワークなどと協力し、在日台湾人団体と共に4月12、13両日、大阪・梅田のショッピングモール「ハービス Plaza Ent」広場で「台湾祭り」を開催した。

イベントはメディアから広く注目され、主催者によると5000人以上が参加し、メディアから多くの注目を集めた。

台湾政府の国策顧問で大阪台湾同郷会長の謝美香氏は「同様のイベントを東京や名古屋などでも開き、台湾の外交力を継続していきたい」と話している。


 ■解説:  

 台湾は博覧会国際事務局(BIE)に加盟していないため「台湾館」の名称で参加できない中、台湾経済部(経済産業省)の外郭団体の出資で設立した民間会社「玉山デジタルテック」が万博に出展。

台湾祭りはいわば、台湾の存在感をアピールする取り組みの「側面支援」の役割を担った。

 ジャーナリストでIPST創設者の矢板明夫氏は「今回のイベントは全て民間の力による取り組みでした。『台湾は国際舞台を欠席しない』という理念のもと、数か月にわたる準備と多くの課題を克服し、世界に向けて台湾の存在感を伝える機会となりました」と語っている。

今回のイベントを通じて日台の民間交流を促進し、世界中の友人たちが万博を通じて台湾をより理解し、支持してくれることを期待している。


 4月5~18日に行われた台湾軍の演習「漢光41号」で、元在韓米軍司令官のロバート・エイブラムス(Robert B. Abrams)陸軍退役上将がシニアオブザーバーとして演習に参加し、台湾軍の梅家樹参謀総長の顧問を務めた。

エイブラムス氏の父親はクレイトン・エイブラムス・ジュニア(Creighton Abrams, Jr.)大将で、米軍の戦車「M1エイブラハム」は彼の名前を冠している。


 ■解説:  

 3月には日本の自衛隊制服組トップの統合幕僚長を務めた岩崎茂氏が台湾の卓栄泰行政院長(首相)の招請を受けて、民間人として行政院(内閣)顧問に就任した。

表面上、岩崎氏とエイブラハム氏はいずれも個人の立場で台湾に協力しているように見えるが、外交関係に影響を与える可能性のある人事は、当事国首脳の同意を得ていると考えるのが自然。

米国と日本が積極的に台湾防衛に協力しようとしていることが、2氏の動向からうかがえる。

「米国、日本と台湾が連携し、台湾海峡の平和を守る」というトランプ米大統領の意図もくみとれる。


【概要】

中国人民解放軍の年間訓練サイクルによると、年末に訓練検閲を行い年間の成果を確認し、その成果をもとに年明け1月から新たな訓練年度が始まる。

その年度の訓練や部隊運営の重視事項は、1月の年度開始時の国防部記者会見、1~2月の春節前の部隊視察、3月の全人代の軍・武警代表全体会議において、それぞれ示される。3月以降はその指示に基づく訓練を実施していくという大きな流れがある。

したがって、全人代を含めた軍に対する一連の指示を見ることで、重要なポイントが浮かび上がることから、以下一つずつ検討していく



〇2025年の中国軍への指導事項


・年度開始時の国防部記者会見(1月)

昨年、国防部報道官が発表したのは①基礎訓練、②対抗訓練、③統合訓練、④科学技術を活用した訓練という項目建てであったが、今年は①現実の脅威に則した統合訓練を第1に上げたことから、台湾侵攻を想定した統合訓練が活発化するものと予想される。

次に②基礎訓練・合成訓練を上げ、全軍合成訓練現地会議等の成果をもって訓練基準が統一されたことが示された。

そして③新装備・新領域(無人装備・AI等)の訓練を取り上げ、逐次部隊に配備中の新領域関連装備の訓練が本格的に開始されることも示された。

最後は④科学技術を活用した訓練で、昨年同様に位置づけられた。



・春節前の部隊視察(1~2月)

昨年は習近平中央軍委主席が洪水災害派遣を実施した天津警備区の部隊視察を行い、その際、建軍百年奮闘目標実現へ努力せよと指示した。

張又侠同副主席や何衛東同副主席は北京の部隊を視察し、同様の指示をしている。

今年は、習主席は瀋陽の北部戦区機関を訪問し、6個戦備当直部隊の任務執行状況をリモートで視察した。

その際、全軍が戦備当直を強化し、不測事態に適時適切に対応すべしとし、昨年と違い、何時でも台湾侵攻が可能な態勢であるべきことが示された。

また、張又侠副主席は情報支援部隊を視察し、党の政治主導と腐敗・不正への厳正な対応を指示し、何衛東副主席は、北京空軍レーダー部隊を視察し、新質戦闘力建設を強化するよう指示した。

新質戦闘力は、新領域能力をネットワークなどでシステム化した多元的戦闘力のことで、今後の軍装備整備の方向性を示している。



・全人代の軍・武警代表全体会議(3月)

全人代に参加する軍・武警の代表による全体会議が、全人代開催時に制服組トップの張又侠軍委副主席の主催で開催。

この会議は、全軍の主要幹部と優秀隊員が一堂に会し、最高指揮官(習近平軍委主席)が年度の指針を示す重要会議である。

昨年は、習主席から使命の自覚と新領域における戦略能力の向上が示されたが、今年は、質の高い発展と軍隊建設第14期5か年計画の達成が指示された。

質の高い発展は、民間の優れた力と資源を活用し、新質戦闘力の発展を加速させること。

軍隊建設5か年計画の達成は、少なからぬ矛盾と問題に直面しているが、計画的に事業を進め、期限内に達成することを指示したものである。

つまり執行部は、5か年計画が遅滞していると認識し、建軍百年奮闘目標である2027年まであと2年の期限を念頭に、執行要領の改善と、問題発生の一因である汚職への対処を強化する。

他方、新領域では民間技術・アセットを活用し、戦略能力の向上については引き続き米サイロと同等数のICBMサイロ建設を加速するだろう。



〇指示に基づく具体的活動


・3個条例の改定

2025年2月、中央軍委は「内務条例」「規律条例」「隊列条例」を改訂し、4月から施行するとした。

その目的は戦争準備に焦点を当てた法規整備であり、そのうち「内務条例」は、人員の戦争準備の職責や部隊の戦備体制保持規範を改訂し、「規律条例」は、戦時の論功行賞や戦場での規律維持・処分等を改訂し、「隊列条例」は、新装備に関する規定や指揮権等を追加した。



・台湾周辺戦備警戒パトロール時は即射撃可能

元宵節の2月12日、東部戦区海空軍は台湾周辺で戦備警戒パトロールを実施したが、その際、中国国営公共放送CCTVの取材に対し、戦備警戒パトロール時は常に砲弾は全装填し、射撃システムも発射準備状態でいつでも射撃できる状態であると明かした。



・空軍部隊が訓練から戦争へ移行する訓練

空軍某旅団が訓練準備中、突然の戦闘警報により訓練から戦争に移行し、目標空域での任務達成を命じられ、速戦即決の訓練が実施されたことが2月に報じられた。



〇2025年の中国軍の方向

建軍百年奮闘目標を達成する、すなわち2027年までの戦備体制を確立(台湾侵攻準備の完了)するため、計画の遅れを取り戻す必要があり、一層戦争準備を加速するだろう。

台湾や日本周辺では、常態化させている軍・海警のプレゼンスに加え、民間アセットも利用する。また台湾への圧力を強化するため、より近傍で烈度の高い演習を実施する。さらに訓練と実戦の境界を曖昧にし、台湾を物理的・心理的に疲弊させるだろう。

米国に対しては、引き続きICBMサイロ群を整備して、「相互確証破壊」核戦略を推進するものと思料する。

日本は、中国の速戦即決能力向上に対し即応態勢を整備し、中国の新領域に対抗できる技術力を官民連携して向上し、日米拡大抑止を強化することが重要だ。いずれにしても、戦略3文書で示した防衛力整備に注力し、核抑止の議論もしていく必要がある。

甘利明でございます。ようこそ、お越しいただきました。

私が九州の熊本を訪れますと、一番尋ねられるのが「TSMC(台湾積体電路製造)は第3番目の工場をいつ着工するんですか?」という質問です。TSMCにその質問をぶつけると、返ってくる答えは一つです。「お客さんが見つかり次第です」と。

 北の果て(日本)では、ラピダスがTSMCに追いつくため半導体の製造工場を作っています。ラピダスの話が出ますと、半導体の関係メディアから「お客も見つからないのに、ラピダスを作って大丈夫ですか?」という質問が来ます。

今、世の中はDX、デジタルトランスフォーメーション。つまり、アナログ社会がデジタル社会に歴史的に転換していく時なのです。デジタルトランスフォーメーションというのは、社会全体がデジタルで動く、社会全体がデータで制御される。そういう世界に全く変わっていくということです。世界中の工場がデータを集めて、そのデータに基づいて日々改善が行われ、そのデータに基づいて新しい動きが始まっていく。データ駆動型の産業に変わっていくわけです。

 つまり、あらゆる産業が半導体で駆動されるわけです。私の地元の市役所も生成AIを導入しました。これからは人間がやっている窓口処理は、すべてAIがよりスピーディーに、より正確にやってくれるわけです。産業界だけじゃなくて、医療の世界も半導体が入ってきます。東京にいる名医が、500キロ離れた離島の患者を手術できる時代も間もなくやってきます。

今までは半導体は電化製品を動かすだけの役割でした。これからの半導体は、社会のすべてをオペレートしていく役割に変わるのです。TSMCの第3工場は「お客が見つかったら」着工し、ラピダスは「お客さんは本当にいるんですか?」と言われますが、これからの世界は「半導体のお客さんしかいない」世界に変わっていくのです。

米国のアリゾナにやっとTSMCのハイエンドの工場ができます。そこの生産の歩留まりは、どうやら台湾本社よりも高くなるらしいという話が入りました。そんなはずがない。なぜそんなことができる? それは、1300人の関係オペレーターを全員、台湾からそっくりアリゾナに持っていくから、という回答でありました。台湾人だけでアリゾナの工場を動かしていたら、トランプ大統領は必ず「アメリカ人を雇え、生産ラインは全部アメリカ人に変えろ」と要求してくるはずです。しかしアメリカ人に変えた途端、生産は止まります(会場笑い)。

ラピダスはハイエンドを作って、TSMCに追いついて、一緒に新しい時代を築こうと考えています。そのための人材は、かつての日本のトップ100人の技術者を世界中から呼び戻して、さらに、IBMのニューヨーク・アルバニーの研究所で半年間、一年、特訓をして、初めて使いものになるのです。アリゾナ大学は、アメリカ一の半導体の大学だそうです。TSMCはアリゾナ大学とコラボレーションをして、人材を一生懸命育成していく。おそらく、エンジニアやテクニシャンは、ある程度できるかもしれませんが、ラインを動かす作業員はどうするのでしょうか。アメリカの製造ラインの作業に携わる方々、一生懸命やっているのは分かりますけれども、金曜になると、昼から時間が気になります。もう帰らなくちゃ。5時になった。まだ自分の仕事を片付けなければ、区切りはつかない。いやいや、5時だから、さようならってみんな帰ります。自動車のラインはそれでも動くかもしれません。しかし、ハイエンドの半導体のラインは、それでは絶対動かないのです。

私はTSMCの工場のオペレーションを勉強するたびに圧倒されます。本当にこの企業に追いつくことができるのだろうかという思いにさいなまれます。いま、ハイエンドの製造ラインはTSMCしか動かせないのが現状です。インテルも7nmから5nmに入ったあたりで、TSMCにはついていけなくなりました。サムソンもおそらく5nmまでです。それより先は、TSMCについていけません。2nmから1.4nm、そして、最先端のAI半導体に、製造が進化をしていきます。TSMC以外に、これができる企業が世界中に一体あるのか。

 TSMCは台湾の誇りであり、安全保障の要かもしれません。しかし、考えてください。半導体を設計する会社は今はNVIDIAですけれども、ブロードコムとか、あるいはGAFAM(Google、Apple、Facebook=現Meta、Amazon、Microsoft)の設計部隊とか、NVIDIA一強から崩れていきます。今までは上流がサプライチェーンを支配してきました。具体的に言えば、NVIDIAがサプライチェーンを支配し、NVIDIAの利益率は80%です。8割が利益。これ、反則じゃないですか。

 設計・開発する会社はどんどん増えていくでしょう。でも、それを作れる会社が、ファウンドリーが一社しかないとしたら? サプライチェーンは上流が支配する世界から、実は下流が支配する世界に変わっていきます。これから設計をする世界は、特定の産業界専用のAI、特定の企業専用のAIと、カスタマイズが進んでいきます。カスタマイズ化がどんどん進んでいく中で、たった一社しか受けることができない。しかし、世界のカスタマイズを一社で受けることが不可能です。ということは、これがDX社会の世界の最大のリスクになっていくわけです。

だとしたら、TSMCと共同して、それとほぼ同じか、それに近い技術力を持ってカスタマイズを受けられる会社、ハイエンドを受けられるファウンドリーは二社ないと、世界全体のリスクになってしまいます。我々がラピダスを創設したのは、世界のDXを支えていくファウンドリーとして、TSMCとラピダスがいることによって、サプライチェーンが安定をし、世界のリスクが減少し、そして、自由と民主主義と法の支配、これを基本的な理念とするチームが、世界を安定する基盤となっていくからです。

トランプ大統領は、主な製造業はアメリカの国内で、サプライチェーンを完結させたいと思っています。なぜ、世界は貿易を振興してきたのか。そして、貿易の取扱量が増えるのと一緒に、なぜ世界のGDPは伸びてきたのか。その理由は、一番品質が良くて、安いものを組み合わせてものが作れる。これが貿易だからです。アメリカの中で全てを完結させるという考え方は、実はアメリカ人は一番安くて品質の良いもの、その集合体としての製品を使えなくなる。つまり、損な買い物をするということになります。

トランプ大統領は、宇宙政策とAI政策を一番大事な柱にしたいと言われています。ハイエンドの半導体、なかんずくAI半導体がなければ、AIは動きませんし、ロケットも飛びませんし、ミサイルの制御もできません。その半導体は数百の企業が集まり、数千の工程を経てできあがる製品です。一つの国の中で、この数百社、数千工程の生産物を作り上げるということは、全く不可能です。アメリカは設計・開発が得意です。そして、製造ラインを作る製造機器は、アメリカと日本とオランダで世界の8割以上を占めています。材料は日本が55%、そしてハイエンドの最も最先端のロジック半導体の94%は、台湾が作っています。得意な者同士がコラボしてサプライチェーンを形成しないと、いい製品はできない。そのことをどうトランプ大統領に理解をさせるか、ということが、この半導体の世界の一番の課題です。

 アメリカは得意な設計を、そして日本は得意な製造装置と、得意な材料の貢献をしていく。そして製造現場はTSMCや日本がサプライチェーンを形成して、いい製品を作っていく。半導体の製造工程は、どんどん厳しくなっていく。どうやってベストなコラボを、そして情報漏洩や政治流用されない安定的なサプライチェーンをどうやって作っていくかというのが現代の課題です。

半導体の世界で、二つの大きな変化が起きています。一つは、上流がサプライチェーンを支配するのが、実は下流がサプライチェーンを支配する時代がやってくるということ。そして、これからを支配する製造のファウンドリーの世界でも、大きな変化が起きています。今までは付加価値は前工程が作りました。つまり、微細な加工をどれだけ早く正確にできるかが付加価値の勝負でありました。しかし、そういった進化の法則、ムーアの法則(半導体集積回路の集積率が18か月で2倍になるという経験則)が、急激にスピードを落としています。10Nmから5Nmに行くスピードはムーアの法則かもしれませんが、3nmが2nm、2nmが1.4nmになるスピードはドーンと落ちていきます。それだけ、技術開発は難しくなっていくということです。

しかし、これからは後工程、いわゆるパッケージング、3D積層、今まで平面につないでいったのを立体につないでいくとか、あるいはチップレット、機能の異なる半導体を組み合わせて優れたチップを作る。つまり、後工程が付加価値を高めていくという時代に入っていきます。ここは日本の得意分野です。そういった中で、日台がどうコラボしていくか、一番

世界にとって貢献していく、世界の安定と発展に貢献していくというコラボの仕方を見つけていかなければなりません。

当面、AI半導体のサーバーであるとか、あるいはデータセンターが圧倒的に足りなくなります。台湾はおそらく電力がもう目一杯だと思います。そこで日本も目一杯なんですが、稼働予定の原発がたくさん控えています。例えば中部電力の浜岡原発、新潟の柏崎刈場原発、あるいは北海道の泊原発とか、これらが動き出しますと、かなりの余裕は出てきます。そこで台湾と連動して、必要なAI用のデータセンターをつくるというのも協力の一つにはなるかと思います。

最後に1点。いま、生成AIで過烈な競争が起きています。オープンAIのChatGTP、そしてオープンAIのチームから離脱したチームがつくっているAI。そしてGoogleが参戦しているGemini、あるいはイーロン・マスクのX、ザッカーバーグのメタが参戦しています。つまり、時価総額が100兆、200兆円の企業が潰し合いをしているわけです。

間隙をついて業績を伸ばしているのが、中国のディープシークです。中国は何をしようとしているかというと、ディープシークを世界のみんなが使うインフラにしようとしているわけです。中国は政権の言うことを聞かないインターネットをやめて、自分らで制御ができる第二インターネットをつくろうという提案をして、却下された過去があります。ディープシークとChatGDPなどのアメリカ勢を比べてみましょう。使用料はディープシークの方がはるかに安いです。もう一つ、生成AIを使ってデータを入れて出てきた成果についての使用権は、ディープシークは「どうぞ、お使いになっている人の自由です」。しかし、他のアメリカ勢は使用料が高いし、生成結果についての使用権は自分にあるから「あなたが使いたかったら使用料を払え」というのが現状です。

使用料がはるかに安くて、出てきた成果の使用権を使っているユーザーに与えてくれる、そっちがいいに決まっています。そうすると、その使用者がどんどん増えていきます。データは全部中国に行きます。しかも、企業や研究者がディープシークに対していろいろと指示を出す、質問をする。企業や研究者にしてみれば、自分が何を開発することを目指して、いろいろな投げかけを生成AIにするわけであります。そうすると、ディープシークの方では、この研究者・企業が、どういう開発を、どういう発明を目指してやっているのかが推測できます。そうすると、研究の先取りもできるわけです。ディープシークが世界のインフラになった瞬間に、すべての国は生殺与奪権を中国に握られます。なんとかみんなで、リスクのない生成AIをつくるために、連帯をしていきたいと思います。

ご清聴ありがとうございます。

皆さんこんにちは、千本です。

 だいたい私は月に2、3回は海外出張に行きます。最近は世界最大のモバイルのカンファレンス、MWC(モバイル・ワールド・コングレス)が行われたスペインのバルセロナに行ってきました。MWCは20年くらい続いており、大体10万人くらい集まります。

毎年、ハイテクのカンファレンスは世界に2つあって、1つはアメリカのCES。それが1月にあって3月はモバイルに関するカンファレンス、MWCがスペインであります。どっちも10万人くらい集まります。日本のNTTとかKDDIとかソフトバンクなど、世界中の社長らが集まる。モビリティ、モバイルがどういう形で世界に展開するか、そこに行くと、各社が最新の技術をこぞって出すんですね。

私は一昨年、そのカンファレンスに行って、すごく驚いた。何を驚いたかと言ったら、一社のブースでも(手を大きく広げて)最低これくらいあるんですね。そこに中国のBYDがありました。BYDはもともと中国で安い携帯を売っていた。私はKDDIを創業したということもあって。携帯がどういうふうに変わっていくか、すごく関心があった。そのBYDがどんな新しい携帯を出すのか?と思ったら、最新のかっこいいEV(電気自動車)を出していたんです。携帯の会社がEVを出すのか?とショックを受けました。

そして、世界のEVでBYDがテスラを追い越しちゃった。たった2年で、携帯の会社がEVを作って、あのイーロン・マスクが開発したテスラを追い越しちゃう。世界のハイテク、特にAI、半導体の領域の速さはわずか1、2年で変わる。もちろん、その後ろには開発にすごい時間がかけているんですよ。だけど、2年で(携帯会社のBYDが)EV業界のトップになるような時代になってきた。ものすごい速いスピードで、世界は変わっているということを実感したんですよね。AI時代の非常に大きな特徴です。

 AI、半導体という領域において、今日来て下さった甘利先生という1人の政治家が日本にいなかったら、半導体の世界でもっとひどい状態になったと思います。

今、AI革命の時代のまっただ中に我々はいます。考えてみると、今から300年前に産業革命が起こって、日本、世界、全部含めて、エネルギーであらゆる産業を作る工業社会になった。工業社会の中で基本的に全てのコア、エレメントになったのは、石油だった。ですから、石油を支配する国が世界を支配する。アメリカはすごい石油生産国ですよね。イギリスは北海の石油、サウジアラビア、そういったところが世界を支配した。石油メーカーであればロイヤル・ダッシュ・シェルとかエクソンとか石油に関わる産業が、世界を基本的に支配してきた。

 でも、その大きな流れがここ数年、決定的に変わってきた。工業化社会からAI社会に変わってきた。AI社会の真っただ中で、皆さんの生活もこれからAIでコントロールされ、おそらくAIの技術は人間の頭脳を超える。これは時間の問題だと思います。もちろん、AIでできない領域っていっぱいまだあるけれども。このAI社会を決定的に支えているものは何か? 石油ではなく、最大の基本要素は半導体です。これからは半導体を制するのが、世界を制する。

 半導体の歴史は皆さんご承知だと思います。1990年ぐらいまでは日本が世界のトップで、NEC、東芝、富士通とかが世界を制覇していた。

 その日本が日米半導体交渉とかの経緯があって、アメリカに徹底的にやられて。日本の半導体産業は壊滅的な状況になった。現在では半導体企業のトップ10を見ても、日本は全くない。代わって後ろにのし上がってきたのはアメリカで。インテルとかTIとかが半導体の覇権を握ったわけです。

 その後、アメリカに代わって世界を制覇したのが韓国です。サムソン創業者の李健熙(イ・ゴンヒ)さんは私の同い年ですけれども、彼が日本に学びに来て、それで作ったのがサムソン・エレクトロニクスで、世界最大の半導体メーカーになった。けれども、サムソンがここ数年、少し落ちてきた。それに代わったのが、皆さんご承知の台湾のTSMCですよね。

 TSMCというのは、たった一人の人が作った。ご承知の通り、モーリス・チャン(張忠謀)という人です。

 日本の半導体は2000年まではトップであって、日本が絶対、世界でトップであり続けると思っていた。モーリス・チャンはもともと(米国の)TIにいたんですけども、テキサスから台湾に戻って、TSMCをゼロから作った。リスクを取って、巨大な投資をしたんです。

その時に投資は富士通もNECも何もやらなかった。将来に不安があるのに、投資できるかと。その間にTSMCが世界のトップの半導体会社になった。

 台湾はそういう意味で、これから世界をコントロールするリーディング・カントリーになるんですよね。台湾という国は、ちょっと前までは日本人にとっていい国だった。いい友達だった。だけれども、日本人の多くは、台湾というのは中国に海峡を挟んでいつも脅かされ、非常に不安定な国というか、エリアと見ていた。台湾は国連で国として認められてないですよね。仲がいいけれども国としてはどうかなと思っていたんだけれども、ここ数年、台湾の存在は大事になってきた。先ほど言ったように、これからの世界は半導体によって支配される。これからの20年、30年を考えると、台湾という国が世界の中で最も大事な、日本にとって最も大事な戦略的な国家になってきた。

 台湾という国は、もともと日本にとって非常にフレンドリーな国です。私は台湾でAI半導体の最大の大学で教授をやっているものですから、よく来ます。台湾の人たちは日本に対して非常にフレンドリーですよね。台湾にとっておそらく、日本は最大の友好国だというふうに、私は感じています。

 TSMCは今も最高のものを開発しています。同時に、その半導体産業を支える測定機だとか製造機というのは日本にあるんですよね。東京エレクトロンとかが、台湾の半導体産業を支えているわけです。

 そういう意味で、日本は台湾に必要なパートナーです。まず、日本と台湾は近いですよね。福岡からわずか2時間ぐらいです。福岡から札幌に行くより、台湾に行く方が近い。それから、もう一つ大事なことは、やっぱり、どちらも民主主義国家であるということです。今、習近平主席の中国があり、プーチンのロシアという国がある。非常に短期的には、すごく効率のいい経営をしていると思うけれども、100年後の世界がどうなるか考えたら。独裁国家が歴史で勝ったことはないんですよね。だから、民主主義国家というのは効率が悪いかもしれないけれども、やっぱり民主主義国家でハイテク産業をきっちり開発していく。そういう国々がいずれ勝つんです。ですから、これから100年をにらんで世界を引っ張っていく国って、やっぱり台湾であり、日本であり、それからアメリカであり、おそらく韓国だろう。

と思いますよね。この4つの国に共通しているのは、ハイテクに対してすごい関心がある。人々がすごく熱心だ。それから、かつ、民主主義国家である。共通しているわけですよ。そういう意味では、私が個人的な見方で、この4つの国が世界を引っ張っていくだろう。

私はKDDIとか全部卒業して、今は京都大学の大学院で教えています。台湾ではAIや半導体に関してダントツの大学、NYCU(国立陽明交通大学)で講義をしています。日本の学生、台湾の学生たちに「台湾の重要性をもっと認識して」と言っています。台湾の学生には「台湾というのは将来を握る重要な国の一つなんだ。もっと自信持ちなさい」と。私の観測では絶対、習近平主席が台湾を襲うことはない。習近平さんというのは、独裁政権に戻ろうとしていますけれども、そんなに馬鹿じゃないと思うんですよね(会場笑い)。やっぱり、大きなグレーター・チャイナとしての台湾という位置づけをちゃんと見ているはずで。台湾が世界の宝を持っているんですよ。最高の宝を持っているんですよ。その宝を持って攻撃することによって、グレーター・チャイナを壊すということを、習近平さんは絶対考えないと僕は思います。

 私は毎月2、3回海外に行って、アメリカやヨーロッパ、アフリカ、アジアに行ったりして、世界のトップにも会います。例えばNVIDIAの創業者は私の友人なんで議論するんですが、そういう時に台湾の重要性をみんなに説いてまわっています。だから、僕は台湾のNYCUの大学院生たちに「皆さんは素晴らしい国の素晴らしい時代に生まれてきたんだ。 この台湾にもっと誇りを持ちなさい。台湾自身をもっと信頼しなさい。台湾の将来というのは、皆さん方が握っているんだ」と言っています。

これからの100年を握る国、リーディング・カントリーンとしての台湾。ずっと世界を見てきた経営トップの人間がそう言ってるんですから、台湾の皆さん方、ぜひとも、小さな雑論なんかには惑わされずに、20年先、30年先、将来に対して果敢に挑んでもらいたいと思います。

 台湾は素晴らしい。私は台湾大好き。台湾の成長をすごく見守っている。でも、ちょっと気になっていることがある。TSMCによく行ってこの頃感じるのは、皆さんTSMCに入りたがっている。若い人たちもTSMCに入りたがっている。その学生の態度は、かってのモーリス・チャンとは全然違うんですよ。30年前の日本と同じで、リスク取らない、いい会社に入りたい。給料3倍もらいたいという考え。そうなると、日本が30年前に犯した失敗に今、台湾は直面していると思います。これから来る10年、20年、30年、50年の未来というのは、待っていても決して新しい未来は来ません。未来というのは、我々がリスクを取って、新しい局面を作り出すことによって、来るんです。是非とも、台湾の若い人たち、ここにいる皆さんたち、日本と一緒になって、アメリカと一緒になって。是非とも、50年、100年先を見て、リスクを取って、今やるべきことを続けてださい。必ず新しい世界が、皆さんの手で出来上がることになることを確信しています。

どうもありがとうございました。

皆様こんにちは。私は政治大学の李世暉と申します。現在、台湾日本研究院の理事長を務めております。政治大学は今年、世界初の「安倍晋三研究センター」を設立することになりました。ここで発表する機会を得て、大変光栄に思っております。

 本日のテーマは、米中が半導体を中心に対立している中、新しい国際政治概念「チェーンパワー」について話します。この概念は特に東アジア地域において、台湾を中心とした特異な位置づけを浮き彫りにし、日本も含まれています。

チェーンパワーは以下の三つの面から理解できます:

  1. 列島チェーン(安全チェーン):安全保障問題の構築に関係し、特に第一島線(日本から台湾、フィリピン、インドネシアまでの中国に対する防衛ライン)の安全性を含みます。
  2. 供給チェーン(技術チェーン):特に半導体供給チェーンの安定性は各国の技術発展にとって非常に重要です。
  3. 民主チェーン(価値観チェーン):各国の民主的な価値の連携が注目され、共通のグローバルガバナンスの観念を形成する上で重要な役割を果たします。

チェーンパワーにおける2人の重要な国際指導者の発言を引用し、この概念の重要性を強調したいと思います。

  1. 賴清德総統の就任演説:賴総統は昨年5月20日の演説において、世界に於いて台湾の役割が非常に重要である旨を述べました。特に、三大チェーンと五大信頼産業(台湾の経済発展と国際競争力強化のため指定した産業分野)を挙げており、これらはチェーンパワーの概念と高く一致しています。五大信頼産業は半導体、人工知能(AI)、軍事、セキュリティー、次世代通信を指します。
  2. トランプ米大統領の産業政策:「アメリカを再び偉大にする」というトランプ政権の主張は、一方的な政策によりアメリカの経済構造を再編成し、東アジア諸国に大きな影響を与えています。

トランプ氏の政策の中で、台湾が特に関心を持っているのは次の通りです。

  1. 外交政策:これはアジア情勢、特に中国との関係に対するアメリカの対応に関わり、民主チェーンの概念と重なります。
  2. 安全保障政策:トランプ氏は利益重視の一方的な政策を採るため、台湾はアメリカの支持を得るためにより高いコストを強いられる可能性があり、これが列島チェーンの問題に関連しています。
  3. 貿易および産業政策:トランプ氏の「アメリカファースト」政策により、台湾は新たな経済環境に適応する必要があります。

最後に日米関係と台米関係から半導体発展の未来を見ていきます。以下の点が重要です:

日米関係:友好的な関係が維持されるなら、台湾積体電路製造(TSMC)は日本での投資を拡大するでしょう。逆に関係が緊張すれば、TSMCは工場を建設している米アリゾナでの投資を加速する選択をするかもしれません。

台米関係:TSMCは今年3月にアメリカへの投資を1000億ドル(約15兆円)追加し、合計1650億ドルに増額することを発表しました。この投資は台湾の半導体産業に大きな影響を与えるとともに、日本の半導体産業にも影響を及ぼします。具体的にはTSMCの日本への投資が変化するか、または日本の半導体設備や材料がアメリカに移転するのかという問題が浮上します。これらの要因は、今後台湾と日本が半導体協力を行う際の新たな変数となるでしょう。

この重要なテーマについて今後とも皆様と交流し、協力できることを楽しみにしております。ご静聴ありがとうございます。