2025.3.28 台日科技未来フォーラム講演 

台日科学技術の発展と協力の機会

台湾日本研究理事長 李 世暉(リ・セイキ)氏  
公開日:2025年4月10日

皆様こんにちは。私は政治大学の李世暉と申します。現在、台湾日本研究院の理事長を務めております。政治大学は今年、世界初の「安倍晋三研究センター」を設立することになりました。ここで発表する機会を得て、大変光栄に思っております。

 本日のテーマは、米中が半導体を中心に対立している中、新しい国際政治概念「チェーンパワー」について話します。この概念は特に東アジア地域において、台湾を中心とした特異な位置づけを浮き彫りにし、日本も含まれています。

チェーンパワーは以下の三つの面から理解できます:

  1. 列島チェーン(安全チェーン):安全保障問題の構築に関係し、特に第一島線(日本から台湾、フィリピン、インドネシアまでの中国に対する防衛ライン)の安全性を含みます。
  2. 供給チェーン(技術チェーン):特に半導体供給チェーンの安定性は各国の技術発展にとって非常に重要です。
  3. 民主チェーン(価値観チェーン):各国の民主的な価値の連携が注目され、共通のグローバルガバナンスの観念を形成する上で重要な役割を果たします。

チェーンパワーにおける2人の重要な国際指導者の発言を引用し、この概念の重要性を強調したいと思います。

  1. 賴清德総統の就任演説:賴総統は昨年5月20日の演説において、世界に於いて台湾の役割が非常に重要である旨を述べました。特に、三大チェーンと五大信頼産業(台湾の経済発展と国際競争力強化のため指定した産業分野)を挙げており、これらはチェーンパワーの概念と高く一致しています。五大信頼産業は半導体、人工知能(AI)、軍事、セキュリティー、次世代通信を指します。
  2. トランプ米大統領の産業政策:「アメリカを再び偉大にする」というトランプ政権の主張は、一方的な政策によりアメリカの経済構造を再編成し、東アジア諸国に大きな影響を与えています。

トランプ氏の政策の中で、台湾が特に関心を持っているのは次の通りです。

  1. 外交政策:これはアジア情勢、特に中国との関係に対するアメリカの対応に関わり、民主チェーンの概念と重なります。
  2. 安全保障政策:トランプ氏は利益重視の一方的な政策を採るため、台湾はアメリカの支持を得るためにより高いコストを強いられる可能性があり、これが列島チェーンの問題に関連しています。
  3. 貿易および産業政策:トランプ氏の「アメリカファースト」政策により、台湾は新たな経済環境に適応する必要があります。

最後に日米関係と台米関係から半導体発展の未来を見ていきます。以下の点が重要です:

日米関係:友好的な関係が維持されるなら、台湾積体電路製造(TSMC)は日本での投資を拡大するでしょう。逆に関係が緊張すれば、TSMCは工場を建設している米アリゾナでの投資を加速する選択をするかもしれません。

台米関係:TSMCは今年3月にアメリカへの投資を1000億ドル(約15兆円)追加し、合計1650億ドルに増額することを発表しました。この投資は台湾の半導体産業に大きな影響を与えるとともに、日本の半導体産業にも影響を及ぼします。具体的にはTSMCの日本への投資が変化するか、または日本の半導体設備や材料がアメリカに移転するのかという問題が浮上します。これらの要因は、今後台湾と日本が半導体協力を行う際の新たな変数となるでしょう。

この重要なテーマについて今後とも皆様と交流し、協力できることを楽しみにしております。ご静聴ありがとうございます。